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抗リウマチ薬の併用で重症COVID-19が改善

[2020.06.18]

 先日新型コロナウイルス感染症(COVID-19)には様々な薬剤が投与され、有効性があるかもという話が多くあるとお伝えしましたが、今回新しく集中治療室(ICU)以外で治療を受けている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症患者に対して、インターロイキン-1(IL-1)受容体拮抗薬anakinra(アナキンラ;日本販売名 キネレット ;未承認薬)が有効である可能性が示されました。イタリアのGiulio Cavalli氏らが実施した小規模研究によると、重症COVID-19患者に対し、持続陽圧呼吸(CPAP)療法による非侵襲的人工呼吸管理とヒドロキシクロロキンおよびロピナビル/リトナビルに加えてanakinraを高用量で静脈投与したところ、臨床的な改善が認められたといいます。

 COVID-19患者の多くは軽症だが、一部の重症例では免疫系が過剰に反応するサイトカインストームという反応が起こり、過剰な炎症状態を呈し急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に至ります。ARDSはCOVID-19患者の主要な死因の1つで、ARDSを合併したICU入室COVID-19患者の推定死亡率は28~78%と報告されています。しかし、パンデミックの影響が特に深刻な地域ではICUのベッド数が不足し、ARDSを合併する重症患者でも一般病棟などICU以外の環境で非侵襲的人工呼吸管理などによる支持療法を受けざるをえない場合があります。そのため、ICU以外で治療を受けている重症患者の予後改善につながる治療法が求められています。

 こうした中、炎症性サイトカインの阻害薬がARDSを伴うCOVID-19患者の治療薬として有望視されています。関節リウマチやスチル病などの治療薬として米国および欧州で承認されているIL-1受容体拮抗薬のanakinra(アナキンラ)もその1つです。

 今回の研究では2020年3月17~27日に非侵襲的人工呼吸管理、標準治療に加えて高用量anakinra(5mg/kgを1日2回)を静脈投与した29例(高用量anakinra群)の生存率、非人工呼吸管理下での生存率を、同年3月10~17日に非侵襲的人工呼吸管理と標準治療のみを実施した16例(標準治療群)と比較したものです。

 その結果、21日後の生存率は、標準治療群の56%に対して高用量anakinra群では90%と有意に高い結果でした。非人工呼吸管理下での生存率は標準治療群で50%、高用量anakinra群では72%でした。

 ICU外での非侵襲的人工呼吸管理下にあるARDS合併COVID-19患者の後ろ向きコホート研究において、高用量anakinraによる治療は安全であり、同治療を受けた患者の72%で臨床的な改善が認められました。

 先日お伝えしたように、効果があるかもといった薬剤は、大勢に使われると必ずしも有効でない可能性があります。しかしワクチンを使えるようになるまでは、重症COVID-19患者の生存率向上につながり、医療機関の集中治療のキャパシティに負荷がかからない治療法を一刻も早く見つける必要がある現状において、既に厳しい安全性の基準に適合していることが確認されていて、今回のパンデミックにおけるニーズに応えられる十分な供給量を用意できる治療薬は理想的かもしれません。残念なことに、現在この薬剤は日本ではリウマチや成人スティル病といった欧米で認可された病気にも使用は認められていないため、日本の重症の方には簡単に使用はできませんが、我々一人一人が第二波予防に心がけ、医療崩壊を防ぎ、自身の健康保持に心がけましょう。 

 

 

 

 

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