気温上昇は急性腎障害エピソードを増やす 英国の急性腎障害登録を利用した最高気温と発生頻度の関係
ゴールデンウィーク期間に急に気温が上昇してきましたが、皆さん暑さ対策はできておられますでしょうか?近年の異常気象のためか、暑さに慣れないことで熱中症や体調不良を来す方が増えており、暑さに身体を慣らしていく暑熱順化の必要性が従来以上に叫ばれるようになりました。
そんな中英国London大学衛生熱帯医学大学院のShakoor Hajat氏らは、英国腎登録の急性腎障害(AKI)e-アラートを利用して、2017~2021年夏季の各地の気温と急性腎障害発生件数の関係を検討し、気温が17℃から上昇するにつれて急性腎障害の件数が増加していたと報告しました。
気温の高い環境で、適切な休憩と水分補給なしに活発な身体活動を行っている労働者は腎機能が低下する可能性があり、腎臓病を発症するリスクも認めます。世界的な気候変動により、急性腎障害のリスク増加は一般の人にも及ぶと予想されていますが、高気温は一般の人が急性腎障害を発症しやすい危険因子と言えるかどうかは明らかではありませんでした。そこで著者らは、イングランドのe-アラートシステムを用いて、高気温に関連する急性腎障害リスクの増加を検出することにしました。
NHSイングランドが2015年に開始した急性腎障害 e-アラートシステムは、個々の患者の血清クレアチニン値に急な変化が生じた時点で、そのデータを日付と場所、患者の急性腎障害ステージに関する情報とともに、検査ラボからUK Renal Registry(UKRR)に自動送信するものです。入院治療を必要としない軽症のエピソードも登録されています。著者らはUKRRに蓄積されていた情報を利用して、KDIGO基準に基づく急性腎障害エピソードと患者の所在地の気温の関係を検討する研究を行いました。
2017~2021年の4月から9月に、135万4675件の急性腎障害エピソードが発生していました。2021年7月16日から22日まで続いた7日間の熱波では、急性腎障害エピソード件数の予測値よりも28.6%増加していました。他の年度の熱波も急性腎障害エピソードの増加と関係していました。
分析対象とした期間の気温の中で、急性腎障害エピソード件数が最も少なかったのは気温17℃の日でした。高温日には急性腎障害の危険性が増加しており、気温が17℃の日と比較した気温32℃の日の急性腎障害のなりやすさはは1.623倍でした。高気温の急性腎障害に対する影響が最も表れやすかったのは翌日で、続いて当日でした。17℃から気温が1℃上昇当たり1.020倍危険度が上昇していました。
これらの結果から著者らは、高気温に関連した急性腎障害は公衆衛生上の大きな課題になると予想され、腎機能の小さな変化であっても、患者の将来の健康に影響する可能性があるため、高気温が予測された時点で、リスクの高い人に予防策を講じるよう助言する必要があると述べています。
この結果はイギリスイングランドのものですが、日本においても同様の心配があります。暑さに身体を慣らしていく暑熱順化や外出の際の帽子や水筒持参、気温の高い時間を避けて外出するなど、個々での熱中症、高温暴露を避けるよう心がけてください。