「和食のほうが体にいい」の勘違い
体にいい食生活というとみなさんはどんなものを思い浮かべますか。
ご飯に味噌汁、焼き魚といったいわゆる伝統的な日本の食卓をイメージされるかもしれません。 実は国立国際医療研究センター等の研究チームが興味深い研究結果を発表しています。この研究では食事の内容を健康型、伝統型、欧米型の3つのパターンに分けそれぞれの死亡リスクについて調べました。健康型の食事とは、野菜、果物、イモ類、大豆製品、きのこ類、魚、緑茶など。伝統型の食事は、ご飯や味噌汁、漬物、魚介類など。欧米型の食事は、肉、パン、乳製品、果物のジュース、コーヒーなどです。
このなかで、最も死亡リスクが低かったのは健康型の食事の傾向が強い人たちでした。これは容易に想像できる結果です。しかし、健康型に次いで死亡リスクが低かったのは、欧米型の食事の傾向が強い人たちだったのです。
具体的には、健康型の食事の傾向が強い人たちは、同じ傾向が弱い人に比べて心臓病の死亡リスクが25%低いという結果が出ましたが、欧米型の食事の傾向が強い人も傾向が弱い人より12%低くなっていました。脳血管疾患による死亡リスクも健康型の食事の傾向が強い人たちは37%低くなっているのに対し、欧米型の食事の傾向が強い人たちも12%低くなっていたのです。一方伝統型の食事パターン、つまり典型的な和食の傾向が強くても死亡リスクは下がらないこともわかりました。これも「和食は健康にいい」と思っている人たちには意外な結果だったかもしれません。なぜ欧米型の食事が伝統型の食事よりも死亡リスクを下げたのでしょうか。
その理由は、いくつか推測できます。1つ目は欧米型の食事は伝統型の食事より塩分が少ないことがあげられます。塩分は高血圧の原因になり脳や心臓などの血管に負担をかけて重大な病気を起こします。
2つ目は欧米型の食事はタンパク質が豊富なことです。ヨーグルトやチーズなど乳製品や肉類には良質なタンパク質が含まれています。肥満については関心が高く、生活習慣病を防ぐためにダイエットしている人も多いでしょう。その一方で、タンパク質が不足し、栄養失調になる人も多いのです。特に高齢者のタンパク質不足は要注意です。タンパク質が足りないために筋肉や骨がやせ、ちょっと動くだけでもつらくなっていきます。すると運動機能が衰え心臓や肺の機能も低下し〈フレイル〉と呼ばれる虚弱状態に陥っていきます。
コレステロール、肥満、中性脂肪が気になって牛乳は飲まない、卵は食べないという人がたくさんいらっしゃいます。しかし栄養バランスに優れたこれらの食品をわざわざ「絶対に食べない」などと除外せず、少量でもいいので食べるように心がけることが大切です。納豆や高野豆腐もタンパク質を充てんする食品としておすすめです。