ロシア・反体制派の暗殺未遂
国際的な医学雑誌に症例報告という、一患者さんの診断経過や治療状況の報告が載るのですが、何げなく見てビックリしました。なんと昨年(2020年)8月に暗殺されかかったロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏のベルリン・シャリテ(Charité)病院からの治療経過報告だったのです。
事件に使われた毒物は1980年代に旧ソビエト連邦で開発された有機リン系の神経剤(nerve agents)ノビチョクであることが確定されました。農薬で有名な有機リン系農薬(マラソン、スミチオン、オルトラン)やオウム真理教のサリン、金正男殺害に使われたVXと似たような毒物です。ノビチョク中毒はロシアから英国へ亡命した情報機関員セルゲイ・スクリパル親子の2018年殺害未遂をはじめ過去5件ありロシアのスパイによると思われます。ノビチョク中毒の詳細報告はこの症例が世界初です。
私が学生の時にオウム真理教の地下鉄サリン事件がありました。テレビ報道で情報を得ていたのですが、当初患者さんが運び込まれた複数の病院医師がテレビインタビューに出ていました。かたやなんか吐いて下痢しているという医師、かたや農薬等有機リン系中毒様症状という医師の映像をみて、同じような患者さんを診ても、医師によって違いが出るなと学ぶことの重要性を実感したのを思い出しました。皆様の病気による苦悩や不安を理解、改善できる医師になれるよう、今まで以上に研鑽していきたいと思います。