ホルモン避妊薬で喘息重症化リスクが低減
気管支喘息は咳や痰が増えて、呼吸困難をきたすなど、持病をお持ちの方は大変ご苦労をされる疾患です。普段から吸入薬や飲み薬を使用していただくことが多いのですが、それでも風邪や気候の変化をきっかけに状態が悪化される方もおられます。こういった悪化の原因や軽減される方法などが日々研究されているのですが、今回女性の避妊に用いられるお薬が喘息の重症化を減らす可能性を示唆する研究発表がありました。
具体的にはプロゲステロンというホルモン単独を除くホルモン避妊薬が、生殖年齢の女性喘息患者における喘息重症化リスクを若干低減させることが示されました。スウェーデン・University of GothenburgのBright I. Nwaru氏らは、英国のプライマリケア・データベースを用いて16~45歳の女性8万例超を17年間追跡した後ろ向きコホート研究の結果から分かったのですが、これは喘息発症後の生殖年齢女性において、ホルモン避妊薬が喘息の転帰に及ぼす影響を検討した縦断研究では最大規模のものです。
女性ホルモンが喘息症状に影響
元来男性の方が喘息の発症や重症化が多いといった、喘息の発症率と重症度における明らかな性差については女性ホルモンの関わりである程度説明できると考えられています。また、月経周期におけるエストラジオール(女性ホルモン)値とプロゲステロン(卵胞ホルモン)値の変動は、女性の喘息症状の悪化と関連が示されています。女性の喘息に対するステロイド薬の有効性は数十年にわたり研究されてきたが、一貫した見解は得られていなません。こうした中Nwaru氏らは、ホルモン避妊薬の種類、使用時期・期間の違いが、喘息重症化リスクに及ぼす影響をBMIや喫煙歴で層別化して検討しました。
喘息女性8万人超を17年間追跡
英国全域のプライマリケア診療所630施設600万例超の診療録を収録したOptimum Patient Care Research Database(OPCRD)のデータから、喘息治療歴がある生殖年齢(16~45歳)女性8万3,084例を17年間追跡した研究です。
合剤の長期使用でリスクが微減
タバコ等の影響を除いた重度の喘息発作リスクは、ホルモン避妊薬の不使用群に対し過去あるいは現在ホルモン避妊薬を使用した人では4~6%低い結果でした。
またホルモン避妊薬のうち、プロゲステロン単独と喘息重症化リスクとの関連はなかったですが、エストロゲン+プロゲステロン配合剤は、ホルモン避妊薬不使用群に対し、比較的小さいものの発作が減っているという結果でした。
更に使用期間が1~2年ではリスクとの関連は見られませんでしたが、不使用の人に比べ3~4年使用の人、5年以上使用した人ではリスクが6~9%低くなっていました。
喘息の性差は思春期と関係
以前より 女児に比べて男児で喘息発症率が高い理由が研究されてきましたが、どうも女性ホルモンが喘息を抑える作用があるのかもしれません。喘息治療のために避妊薬を内服することは、現時点では副作用などの観点でお勧めできませんが、こういった事実を基に、喘息治療薬の進歩や発症予防の研究が進むことを期待したいですね。