新型コロナウイルス対インフルエンザウイルス、ヒト皮膚での生存時間は?
残念ながら新型コロナウイルス感染症は第3波と思われる再流行が見られ、全国の医療機関がひっ迫してきています。感染拡大防止にはみなさん個々の感染対策が重要ですが、新型コロナウイルスはヒトの皮膚上でどのくらい生存できるのでしょうか。
京都府立医科大学消化器内科学の廣瀬亮平氏らは、ヒト皮膚における 新型コロナウイルス の安定性(生存時間)を、インフルエンザA型ウイルス(IAV)と比較したところ、 新型コロナウイルス が インフルエンザA型ウイルス に比べて、ヒト皮膚の表面上で長時間生存することが明らかになったと発表しました。
新型コロナウイルス 9.04時間、 インフルエンザA型ウイルス 1.82時間
新型コロナウイルス と インフルエンザA型ウイルス を対象病原体として、 死後約1日経過した皮膚を用いて 構築したヒト皮膚モデルおよび各物体〔ステンレススチール、耐熱ガラス、プラスチック(ポリスチレン)〕に塗布。それぞれの表面上でのウイルス安定性を評価しました。その結果、各物体の表面上における インフルエンザA型ウイルス の生存時間は6.07~11.56時間、 新型コロナウイルス の生存時間は58.07~85.74時間でした。
それに対しヒト皮膚モデル表面上における生存時間はそれぞれ1.82時間、9.04時間と、各物体の表面上に比べて大幅に短い結果となり、ヒト皮膚の表面は、身の回りの物体の表面に比べてウイルスの生存に不向きであることが示唆されました。
また、ヒト皮膚モデル表面上における インフルエンザA型ウイルス と 新型コロナウイルスの生存時間の比較では、 新型コロナウイルス の方が大幅に長く、インフルエンザA型ウイルス に比べて長期にわたり皮膚上で感染力を保ち続け、接触感染リスクが持続することも明らかになりました。
15秒間のエタノール曝露で 新型コロナウイルス が不活化
さらに、ヒト皮膚モデル表面上の 新型コロナウイルス および インフルエンザA型ウイルス に対する80%(w/w)エタノールの有効性についても評価、15秒間のエタノール曝露により両ウイルスは完全に不活化されました。エタノール消毒薬を使用した手指衛生は、本来9時間程度続く 新型コロナウイルスの接触感染リスクを速やかに低下させ、感染防止に極めて効果的であることが示されました。
以上から廣瀬氏らは「 新型コロナウイルス は、 インフルエンザA型ウイルス と比べてヒト皮膚上での安定性が高いため、接触感染による感染拡大リスクが高い可能性が示唆された、加えて、 新型コロナウイルス の感染拡大防止には手指衛生の徹底が重要であることが実証された」と結論づけています。その上で「今回明らかとなったヒト皮膚上における 新型コロナウイルス の生存時間は、接触感染リスクの具体的な期間や感染経路の特定に役立つだろう」と付言しています。
新型コロナウイルス感染症の流行開始後様々なことが分かってきましたが、現時点ではやはり手洗いとアルコール消毒、マスク、そして密集した閉鎖空間を避けていただくことが重要です。年末年始で人込みとなる機会が多くなりがちですが、不要不急な外出を控え、十分な予防対策を行いましょう。