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COVID-19(新型コロナウイルス感染症)へのヒドロキシクロロキン、気管挿管・死亡リスク抑制せず

[2020.06.08]

 新型コロナウイルス感染症の流行もいったん沈静化の傾向がみられていますが、東京や北九州市のように、既に第二波の可能性が示唆されています。日本では先日認可されたレムデシベルや、有効性に疑義があると認可が遅れているアビガンなど期待されていますが、現在のところ安全かつ有効性が確実な治療薬や予防薬がない状態です。

 そのため、全世界で健康不安や経済活動縮小の影響が拡大しており、早期の治療薬や予防接種の開発が待たれています。 最近トランプ大統領も服用していると公言して有名になりました が米国では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬として、ヒドロキシクロロキンが広く投与されています。

 しかし今までその使用を支持するしっかりした証拠はありませんでした。同国コロンビア大学のJoshua Geleris氏らは、ニューヨーク市の大規模医療センターでCOVID-19入院患者の調査を行い、本薬はこれらの患者において気管挿管や死亡のリスクを抑制しないと報告しました。

 ヒドロキシクロロキンは、マラリアやリウマチ性疾患の治療に広く使用されており、抗炎症作用と抗ウイルス作用を持つことから、COVID-19に有効な可能性が示唆されています。米国では、2020年3月30日、食品医薬品局(FDA)が緊急時使用許可(Emergency Use Authorization)を発出し、臨床試験に登録されていないCOVID-19患者への使用が認可されました。ガイドラインでは、肺炎のエビデンスがある入院患者に本薬の投与が推奨されており、世界中の数千例の急性期COVID-19患者に使用されているといわれています。

 2020年3月7日~4月8日の期間に、ニューヨーク市のマンハッタン区北部に位置する急性期病院であるニューヨーク・プレスビテリアン病院(NYP)-コロンビア大学アービング医療センター(CUIMC)に入院し、鼻咽頭または口咽頭拭い液を検体として用いた検査でSARS-CoV-2陽性の成人患者の経過からの研究です。救急診療部受診から24時間以内に、気管挿管、死亡、他の施設へ転送となった患者は除外されました。その結果、1,376例が解析の対象となり、フォローアップ期間中央値22.5日の時点で、346例(25.1%)に重症化が確認されました(挿管されずに死亡166例、挿管180例)。ヒドロキシクロロキン投与群は非投与群に比べ、塩部や送還などのイベント発生率が高い結果でした(32.3%[262/811例]vs.14.9%[84/565例]、ハザード比[HR]:2.37、95%信頼区間[CI]:1.84~3.02)。患者さんの背景などを考慮した解析では、ヒドロキシクロロキン投与、非投与群のイベント発生率に差は認められませんでした。

 この結果から今のところヒドロキシクロロキン治療の有益性は認められないということです。なお、NYP-CUIMCでは、すでにガイダンスを改訂し、COVID-19患者におけるヒドロキシクロロキン治療の推奨は削除されました。

 新型コロナウイルスに効きそうなものはすぐにでも取り入れてみたいという意見も多いですが、有効性や安全性は一定の情報が集まらないとはっきりしないことが多いのも事実です。世の中のうわさや不確実な情報に惑わされず、三密を避け手洗いうがい、マスク着用を継続しましょう!

 

 

 

 

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