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帯状疱疹生ワクチン、接種10年後の効果は?

[2023.11.27]

最近テレビでワクチンのCMをよく目にするようになりましたが、帯状疱疹という病気があります。突然身体に皮疹(典型例では帯状になります)が出現し、激しい痛みを伴うことが多い疾患です。その後も皮膚に皮疹の跡が残ったり、違和感や痛みが残ったりと後遺症を残すこともあります。この帯状疱疹に対してワクチン接種が有用、特に50歳以上の帯状疱疹に対する生ワクチン接種は有効です。しかしその効果は接種から1年間が最も高く、その後は時間の経過とともに大幅に減少します。そして、ワクチンの効果がいつまで持続するかは、はっきり分かっていませんでした。しかしこの度10年以降にもある程度の効果が残存することが、米国・Kaiser Permanente Vaccine Study CenterのNicola P. Klein氏らの調査で示されました。

米国の150万人以上の実臨床データを用いたコホート研究

研究グループは、接種後10年以上が経過した帯状疱疹の生ワクチンの有効性を評価する目的で、米国の統合ヘルスケア提供システムであるカイザーパーマネンテ北カルフォルニアの2007年1月1日~2018年12月31日のデータを用いて、年齢50歳以上の150万5,647人を、937万9,685人年追跡しました。

帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛、眼部帯状疱疹、帯状疱疹による入院の予防効果をおけるワクチンの有効性としました。ワクチン接種からの時間の経過によるワクチンの効果の変化も評価あわせて評価しました。

150万5,647人のうち50万7,444人(34%)が帯状疱疹生ワクチンの接種を受けました。研究終了までに、60~69歳と80歳以上は60%以上が、70~79歳は80%以上がワクチン接種を受けましたが、50~59歳の接種率は5%未満とわずかでした。

7万5,135人が帯状疱疹を発症し、このうち4,982人(7%)で帯状疱疹後神経痛、4,439人(6%)で眼部帯状疱疹を認め、556人(0.7%)が帯状疱疹により入院しました。これらからワクチンの効果は、以下のように、接種から1年間が最も高く、経時的に大幅に低下したと考えられます。

ワクチンの帯状疱疹の発症に対する有効率は、1年目の67.2%(95%信頼区間[CI]:65.4~68.8)から10~<12年後には14.9%(5.1~23.7)へ、帯状疱疹後神経痛に対する有効率は、1年目の83.0%(78.0~86.8)から10~<12年後には41.4%(16.8~58.7)へと漸減しました。
また、ワクチンの眼部帯状疱疹に対する有効率は、1年目は70.6%(95%CI:63.4~76.4)でありましたが、5~<8年後には29.4%(17.9~39.2)へ、帯状疱疹による入院に対する有効率は、1年目は89.5%(67.0~96.6)であったが、5~<8年後には52.5%(24.5~70.1)へと低下しました。
全追跡期間における全体のワクチン有効率は、帯状疱疹の発症に対しては45.7%(95%CI:44.5~46.9%)、帯状疱疹後神経痛では62.3%(59.1~65.2)、眼部帯状疱疹では44.5%(39.5~49.1)、帯状疱疹による入院では65.9%(55.3~74.0)でした。

著者は、「先行研究で、帯状疱疹の生ワクチンは、50歳以上の集団において帯状疱疹の発症と帯状疱疹後神経痛のリスクを減少させることが知られていたが、本研究により、これらに加えて眼部帯状疱疹と帯状疱疹による入院のリスクを低減させるのに有効であることがわかった」とし、「今回の調査で使用した方法は、ワクチンの防御効果の持続期間を調査する実臨床研究にとって有用であることが示された」と指摘しています。
    
10年後約半分くらいしか効果がないと感じるか、半分もまだ効果があると思うかの判断は人それぞれだと思います。最初にご紹介した最近のテレビCMが流れている帯状疱疹ワクチンはこの生ワクチンではありませんが、接種後早期の予防効果は生ワクチンより高いと言われています。しかし効果持続に関してのデータはまだまだ少ないのが現状です。ワクチンを接種するか、接種するならいずれのワクチンにするか悩ましいと思いますが、判断に悩まれる方は、当院でご相談下さい。

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