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1日5分たらずの強めの作業がガンの発生リスクを低下させる

[2023.10.31]

 暑くて長い夏もおさまり、ようやく過ごしやすい秋が実感できるようになってきましたね。芸術の秋、食欲の秋等色々な秋を連想されると思いますが、当院ではスポーツの秋をお勧めしています。しかし普段運動が慣れていない人にとって、新たに運動を始めるのはハードルが高めかもしれません。そんな運動の慣れていない人に朗報となる発表がありましたのでご紹介します。

    階段を使って上る、落ち葉をかき集める、重い買い物袋を運ぶといった、日常生活の中で断続的に行う高強度の身体活動(Vigorous Intermittent Lifestyle Physical Activity;VILPA)を1日に合計4.5分間行うだけで、がんの発症リスクを最大31%低下させられることが、新たな研究で示されました。

 この研究は、運動習慣のないことを自己報告したUKバイオバンク参加者2万2,398人(平均年齢62.0歳、男性45.2%)を対象に、VILPAとがんの発症リスクとの関連を調べたものです。対象者のVILPAは加速度計により測定されており、そのほとんど(92.3%)が1分以内の長さのものでした。

 中央値6.7年に及ぶ追跡期間中に2,356件のがんが発生しました。このうちの1,084件は、低い身体活動(PA)量に関連して生じることが示唆されている乳がんや大腸がんなどの12種類のがん(PA関連がん)でした。解析の結果、1日に占めるVILPAの時間は、全てのがん、およびPA関連がんの発症と関連していることが明らかになりまた。例えば、VILPAを行わない場合と比較して、1分以内のVILPAの総計(中央値)が1日当たり4.5分の場合では、全がん発症のリスクが20%(ハザード比0.80、95%信頼区間0.69~0.92)、PA関連がん発症のリスクが31%(同0.69、0.55~0.86)低下していました。また、最大のリスク軽減効果の50%を得るために最低限必要なVILPAの1日当たりの時間は、全がんでは3.4分(17%のリスク低下)であったのに対し、PA関連がんでは3.7分(27%のリスク低下)であり、PA関連がんに対するVILPAの効果の方が強いことが示唆されました。

 Stamatakis氏は、「これらの結果は、運動を始めたり、継続したりすることが難しい人にとって、1日のうちに数回、ほんの短い時間でも高強度のPAをすることが、長期的には健康にとって有益である可能性を示唆している」と述べています。

 一方、米国がん協会(ACS)の疫学・行動研究担当上級主任研究員であるErika Rees-Punia氏は、「PAについては、何もしないよりは何かした方が良いとよく言われるが、この研究結果は、まさにそのことを証明するものだ」「いつでも、どこでも、時間を問わずに行える超短時間の激しい動作でも、そのようなPAに含まれることが本研究で示された。特定の運動プログラムに興味がない人にとっては、歓迎すべき素晴らしい結果だ」とコメントしています。

 なお、Stamatakis氏によると、PAの強度については、以下を目安にするとよいとのことです。原則としては、歌いながら行えるPAは低強度、話すことはできても歌うことができないPAは中強度、ほとんど話すことができないPAは高強度に該当します。同氏は、VILPAは質の高いPAであり、継続して定期的に行えば健康増進に大いに役立つとの見方を示している。

 一方で、Stamatakis氏や他のがん専門家らは、この研究結果を、定期的な運動をやめる口実にするべきではないと警鐘を鳴らしています。Rees-Punia氏は、「この研究には、定期的に運動をしている人が含まれていない。定期的に運動をしている人を含めて、運動習慣はないがVILPAをしている人と比べれば、前者の方ががんの発症リスクが低いことが明らかになるはずだ」と述べています。

    本格的な運動はハードルが高いと思われる方も、ちょっとした5分程度の作業であれば始めやすいですね。毎日の生活の中に5分だけ強めの作業を取り入れてみては如何ですか?

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