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37℃は間違い?平均体温に新常識

[2020.03.10]

アメリカでは19世紀以降、体温低下傾向が続く

 世の中では新型コロナウイルスの話題で持ちきりですが、この新型コロナウイルスを疑う症状の一つに「37.5度以上の発熱が4日以上続く」というものがあります。また新型コロナウイルス感染でなくても、一般に風邪というと37.0度以上を発熱の定義としています。しかし最近受診される方、特に女性に多いのですが、「平熱が低いので・・・(37℃なくても辛い)」といわれる方が増えました。実はこの37℃という数字は、19世紀にアメリカで確立された「平均体温は37℃」という常識から来ているのですが、今この常識が揺らいでいます。アメリカ・ Stanford UniversityのMyroslava Protsiv氏らが、現代の米国人における平均体温は37℃よりも低く、1800年代以降低下し続けていることが明らかになったと報告しました。その報告によるとヒトの体温は多くの人が思っているほど高くなく、平均体温はおよそ37℃という説は誤りとしています。

67万7,432件の体温測定値を分析

 平均的な体温とされてきた37℃という数字は、1851年にドイツの医師が提唱したことで一般的になりました。ところが近年、3万5,000人以上のイギリス人患者を対象とした解析から、平均体温は36.6℃であったとの報告が見られるように、実際には37℃より低い可能性があります。
 そこで今回アメリカ人67万7,432件の測定値を抽出し、体温を継時的に補間する線形モデルを開発しました。このモデルでは、従来の研究で明らかにされている体温上昇因子(若年、女性、体格が大きい、1日のうち遅い時間)も考慮してあります。
 検討の結果、2000年代前後に出生した男性の平均体温は、1800年代初期に出生した男性より0.59℃低く、2000年代前後に出生した女性の平均体温は、1890年代に出生した女性より0.32℃低かった。10年ごとではそれぞれ約0.03℃の低下に相当します。

公衆衛生や住環境の改善による代謝率の低下などが原因か

 Protsiv氏らによると、アメリカ人における平均体温の低下は、代謝率または消費エネルギー量の低下によるものと考えられるといます。これらの低下は集団全体における炎症の減少が原因であると推定されており、「炎症は代謝の促進を通じて、体温を上昇させるさまざまな種類の蛋白質とサイトカインを産生する」と述べています。
 つまり、過去200年で達成された医学の進歩や衛生状態の改善、食糧供給および生活水準の向上などによりヒトが体内で炎症を起こす機会が減ったことが、体温の低下につながっているということです。さらに、冷暖房器具の開発により、一定の温度で快適な生活を送れるようになったことも代謝率の低下に関与していると考えられます。

 我々日本の生活環境も同じような変化を遂げていることを考えますと、冒頭での患者さんたちの低体温も同じ原因かもしれませんね。衛生状態を悪化させることは得策ではありませんが、快適な部屋で運動不足はやはり代謝や免疫力を落とす可能性があります。

 春の日差しも暖かくなってきました。人込みは避けていただきたいですが、少しくらい風が冷たくても外に出て散歩や運動を行いましょう!

 

 

 

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